「絞込み」

今回も、ICOの素晴しいゲームデザインにふれてみたいと思います。
 
ICOの素晴しいところは、ゲームを構成するものを必要最低限に「絞っている」ことです。
 
例えば、このゲームでは登場するキャラが、

  • 「主人公」
  • 「女の子」
  • 敵の「スモークマン」

の3つだけです。
 
他にもキャラを増やせば、もっとゲーム性を華やかにできるはずです。
リソースを増やすことで、ゲーム性を豊かにするのは、
ゲームデザインの常套手段です。
 
しかし、ディレクターの上田さんはそれをしませんでした。
 
キャラを増やすよりも、1つのキャラの動きを徹底的に作りこむことにより、
リアリティを出すことを選んだのです。
 
…また、当初の予定では、ゲームの舞台は、
城だけでなく街や砂漠なども登場する、
スケールの大きなものとなっていたそうです。
 
ですが、舞台は城だけになっています。
 
そのため、ゲームそのものは数時間で終わる小〜中規模のゲームとなっていますが、
お城のデザインやグラフィックは、これでもか!といわんばかりに作りこまれていて、
その美しさには圧倒されます。
(これもリアリティの追求です)
 
ほかにも、細かいことですが、このゲームではHPがありません。
そのため、余計な数値管理や体力ゲージの表示などが必要なくなっています。
 
このように、「無駄を減らす努力」を行った結果、余った力を「別の部分」に回すことができています。
 
そして、その結果、残った部分が際立って、強調されることになります。
 
 
 
 
…人は、何かを表現しようと思ったとき、あれもこれも、と色々詰め込もうとしがちです。
 
それは、
「せっかく作るんだからたくさん詰め込みたい」
という気持ちかもしれませんし、
単に、「自分の知識をひけらかしたい」
ということだけかもしれません。
 
しかし、人に何かを伝えようとしたとき、
あまりにも多くのメッセージ(あるいは無駄なもの)を伝えようとすると、言葉の意味は薄まり、
本当に伝えたいことも伝わらなくなってしまう、ということはよくあると思います。
 
 
ゲームもそれと同じように、
「伝えたいことはたくさんあるんだけど、、、」
という気持ちをグッと抑えて、
的を絞って、
「これを伝えたい!」
という部分をひたすら強調して、伝えた方がよいのかもしれません。
 
特に、リソースの少ない個人開発では、それが重要になるのではないかと思います。
 
 
※参考「海道賢仁氏と上田文人氏がPS2ICO」の開発経緯を解説 そこに実在するかのようなリアルさを実現することが基本コンセプト」
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040329/ico.htm